【南市原里山連合】花いっぱいの風景には地元の人たちの愛があふれていました【チバノサトの人々】

鮮やかな黄色に染め上げられた菜の花畑を走る、レトロなトロッコ列車。

句のひとつも詠んでみたくなるようなのんびりした光景は、房総の春の風物詩でもあり、写真愛好家をはじめ多くの人に愛されています。

毎年、地道な活動によってこの光景を維持してくれているのが、「南市原里山連合」のメンバーの皆さん。

その代表を務める松本靖彦さんに話を伺ってきました。

 

スタートは地元駅前の整備から

松本さんがこの活動を始めたのは17年ほど前のこと。

地元で生まれ育った松本さんが教員を退職し、時間に余裕ができたころでした。

休耕地が増え、どんどん荒れていく里山の風景に胸を痛めたのがきっかけだったといいます。

「自分の周りを自分たちできれいにしようと、3人で始めました。私は小湊鐡道の飯給(いたぶ)駅を、他の2人はそれぞれの最寄り駅である里見、月崎駅を担当して活動を始めました」

「キレイに楽しく」をモットーに、仲間を集めて荒れ地を整備。

秋に種をまいた菜の花は3月に黄色い花を咲かせました。

 

一面に広がる黄色いじゅうたんのような菜の花は圧巻です…!

駅の周辺からスタートしたのは、小湊鐡道を利用する人たちの目にとまりやすく、効果が見やすいから。

観光客からの評価の声も励みになったといいます。

 

仲間を増やして活動は拡大。ゆるやかな「連合」に

こうした活動に賛同してくれる仲間は少しずつ増えていき、小湊鉄道沿線に多くの仲間ができました。

花畑を整備する傍ら、駅前のイルミネーションも手掛けるようになります。

 

「竹を11本地面に打ち込んでいき、そこにLEDランプを設置していきます。今ではほとんどの駅でイルミネーションを見ることができます」

現地に行ってみると、駅ごとに違う特徴のあるイルミネーションが。こうしたいっぱいの自然の中でイルミネーションが電車と一緒に見られることはなかなかないのではないでしょうか。

「そして、その集大成ともいえるのが、隣の月崎駅で活動している『安由美会(あゆみかい)』」が管理している『クオードの森』のイルミネーションです。それまで1カ月600人ほどだった利用者が、このイルミネーションを見るために1カ月に1万人以上も訪れるようになりました」

 

悪天候でイルミネーションの配線に不具合が出ることもしばしば。

ライトがきちんと点灯しているかどうか、日々のチェックが欠かせないといいます。

 

水面に映る夜桜と列車。新しい風景を創出し集客につなげる

もうひとつ、松本さんが手がけた風景として「夜桜」があります。

飯給駅の桜をライトアップするだけでなく、水面に映る桜を演出するため、駅に隣接する田んぼに水を張りました。

ブログにアップした写真は多くの人の目にとまり、写真雑誌などでも紹介されるほどに。

「桜の開花時期、列車が入線するタイミング、空の色合い、風などの条件がぴったり合うとこんな写真が撮れます。田植え時期じゃない田んぼに水を張るのは、それなりに大変でした」と笑う松本さん。

今ではこの写真を撮るために多くの人が訪れるようになったそうです。

大自然に癒されながら、フォトジェニックな風景を撮りに市原へぶらり旅、というのも悪くなさそうですよ。

 

地域を巻き込んだ大きな流れに発展

こうした活動がどんどん広がっていき、現在は沿線の23団体、200人ほどが「南市原里山連合」のメンバーとして活動しています。

また、活動に賛同する行政や民間企業も増え、関連する各団体を交えた「南市原里山会議」が定期的に開催されるようになりました。

201912月中旬には第23回大会では、100名ほどのメンバーが集まり各々の活動の報告会や親睦会が催されました。

「会費は1000円なのですが、多くの方がいらして飲み食い大騒ぎなので毎年赤字です()。それでも、活動をともにする大切な仲間たちですしまだまだ頑張ろうと気を引き締め直せますね。」

 

活動のほとんどがボランティアで、私自身、年間200日以上はさまざまな活動に従事しているといいます」と松本さん。

「イルミネーションの購入費などもメンバーからの持ち出し。私を含め、数百万円単位を活動に費やしたメンバーもいます。ただ、それだけこの地域のことが好きな方たちと、この里山を盛り上げていくことができるのは幸せなのかもしれません()

活動にはメンバーの皆さんの膨大な時間と、多くの資金が注ぎ込まれているといいます。

 

地元愛が活動の原点。松本さんが思う地域の魅力とは

こうした活動の原点になっているのは、生まれ育った地元をきれいに保ちたいという地元の人たちの愛に他なりません。

「この地域の魅力は何もないところでしょうか。どこから見る風景にも生活感があふれていて人の息遣いが感じられます」

こうした里山の景観を守りたい、その思いが活動につながっています。

 

「全国的にも問題になっている耕作放棄地ですが、自分の地区ではその増加をできるだけ食い止めたい。放棄された土地はわずかな期間で荒れてしまい、悲しい景観になってしまいます。花畑を増やすことで、里山の風景を守ることができたら」と松本さんは話してくれました。

 

未来につなぐことの大切さを知ってほしい

60歳でこの活動を始めた松本さんも今年で76歳に。

「私と同じように周囲のメンバーたちも歳を重ねています。これからは若い人たちにも活動に賛同していただき、この活動を未来につなげていくことが大切」と話す松本さん。

「いろいろな形で支援をいただくことがありますが、一番嬉しいのは汗を流すことに価値を見出せる人がいること。自分が流した汗が人々を笑顔にする、この喜びを多くの人に知っていただきたいですね」

 

実際、菜の花の種とりや種まきなど、一般の人が参加できる催しもたくさんあります。

みなさんもぜひ、市原に遊びに来た際にはそのお手伝いをしてみてはいかがでしょうか?

松本さんたちの手によってこれからもますます盛り上がっていくであろう市原市。

季節の花々以外にも多くのイベントが行われていますので、ぜひ足を運んでみてくださいね。

 

南市原里山連合の基本情報、アクセス

南市原SATOYAMAプロジェクト(みなみいちはらさとやまぷろじぇくと)

TEL:0436-23-9755(市原市観光振興課)

千葉県市原市国分寺台中央1-1-1

JR五井駅東口より国分寺台方面行きのバスで約10分